「知能情報システム工学特別講義(自然言語処理)」
~コンピュータ×言葉~
第四十二景は、工学部3年生向けの授業「知能情報システム工学特別講義(自然言語処理)」について、知能情報システム工学科の古宮嘉那子先生にお話を伺いました。
自然言語処理は文系要素と理系要素が混ざった分野ですが、いったいどんな内容なのでしょう。古宮先生の研究人生についてはこちらから。
<プロフィール>
お名前:古宮嘉那子先生
所属学科:知能情報システム工学科
研究室:古宮研究室
趣味:読書・ミュージカル観劇
自然言語処理とは?
ー「自然言語処理」はどんな授業ですか?
まず、自然言語処理(NLP)がどういうものかというと人工知能の一分野です。自然言語と対になる言葉として人工言語というものがあります。例えば、Cなどのプログラミング言語は人工言語にあたります。
ー自然言語処理はどういったことに活用できるのでしょうか?
自然言語処理って、他の分野みたいに〇〇学とついてなくてあくまで処理なので、基本的には人類の役に立てばいいという考えの人が多いです。1番よく使われているのはスパムメールフィルタとかかな漢字変換処理とか。あとは要約システムや英文校正システムなどの機械翻訳にも使われていますね。AIの中でも人気があるテーマで、まだわからないことも多いので研究をしてても楽しいです。
ー自然言語処理というと先生のご専門ですね。
そうですね。今テニュアトラック(注1)なのでそんなにたくさん教えているわけではないですし、そんな中で自分の専門を15回ちゃんと教えられるのはありがたいですね。
理系の講義に文系的視点を取り入れる
ー講義をする上で意識していることはありますか?
実は、私理系より文系の方がよくできる人なんです。文系は勉強しなくてもできるんだけど、理系はすごくたくさん勉強しないといい成績は取れない。もちろん理系の教員だからある程度は理解できるんだけど、何か数式を見ると身構えてしまうんですよね。
ーよくわかります…
工学部だから数式が好きって人ももちろんいるけど、最初に見る式って本当はどんな人にとっても身構えてしまうものだと思っています。いろいろ厳密な書き方があるんだけど、このxって何なのかっていうことを理解するのに、いくつもステップが必要。そういうときに私が意識してるのは自分が苦手だった分、式を理解するために必要な説明にはゆっくり時間をかけることです。
ー確かに数式を数字と記号ではなく言葉として捉えるとわかるということはよくありますね。
数式を扱うときに、「これが定理です。じゃあ次行きます」じゃなくて、「この式の気持ちは何なのか。何でこういうふうな計算になっていて、何でここは掛け算で何でここは足し算で、何をやってるのか」っていうのを言葉で説明しようというのを心がけています。
講義はひとりカラオケ?
ー先生の講義をする楽しさについて教えてください
私人前が結構苦手で…初めて授業をやった時も本当にドキドキでした。助教時代も農工大だったので、当時7号館でやったんですけど前列の人たちにこちらの緊張が伝わるほどだったんじゃないかと思います。今では慣れてそれほど緊張はなくなりましたが、コロナ前は正直授業が好きって思ったことがなかったんです。でも、コロナで長い間対面授業がありませんでしたよね。去年、久しぶりに対面授業をやったら、授業が楽しくて。学生さんが朗らかで、ちょっと冗談を言ったら笑ってくれたりして、私は授業が好きだったんだって気づきました。
ーそうだったんですね。
「人前で話す」のと「人と話す」のは違うじゃないですか。先生として人前に出ていくと100%できることが当たり前みたいな雰囲気がありますけど、あんまり人前で話すことは得意じゃないです。でも、授業ってコミュニケーションがあるし、反応が返ってくる喜びをその時すごく感じました。
他の先生も言っていることなんですが、講義って結構テンション上げていかないと話せないんですよ。ご飯食べた後でねむいときとか、病み上がりの時とか特にね。ただ話すのではなく工夫が必要です。例えばできるだけちゃんと伝わるように抑揚をちゃんとつけるとか、「あなたに話しています」みたいな雰囲気でやるとか。
ー確かに平坦だとつまらないテレビみたいになっちゃいますね。
テンションを上げて相手の注意を引きますよって形で演じていくのが教員のしなきゃいけないことだと思います。だから、毎週1時間半ひとりカラオケをするようなテンションで臨むようにしています。のっていて楽しい時もあるけど、ちょっと体調が良くない時はきついですね。
講義を通じて感じてほしいこと
ー講義を通じて学生に感じてほしいことはなんですか?
私自身は言葉が好きで自然言語処理が好きで、自分の好みでやっているので、自然言語処理のおもしろさや自然言語処理から学べることは学生さんの方が評価者として好きに感じていいんじゃないかなと思っています。わかんないことはいくらでも教えられますけど、好きじゃないのはちょっとどうしようもない。だから好きな人もいるけど、なんか難しいから敬遠する人はいて当たり前だし、しょうがないのかなと思います。できるだけハードルを下げていくのが、教員の仕事ですね。
ー先生が思うこの学問の面白さとはなんですか?
言葉が好きで、そういうのが反映できる分野だっていうのが1番の魅力ですね。工学部はどちらかというと数学を使う分野なので、NLPの研究者の中には数学が好きで、言葉はたまたま扱うことにしたという人もいますし、数学的な思考と言葉に対する情熱、両方あるから好きという人もいます。私は言葉に対する情熱の方が強いタイプだと思います。
(注1)若手研究者を任期付き雇用とすることで自立して研究を行える環境を整備する制度のこと。研究に集中するため、授業科目の担当が少ない場合もある。
古宮先生の「授業百景」はここまで!
授業百景第四十二景はいかがでしたでしょうか?
古宮先生の今に至るまでの経緯、研究への想いについて詳しく知りたい方は「#42「古宮先生」~好きな「言葉」でいきていく~」もあわせてどうぞ!
文章:ほき
インタビュー日時:2022年6月22日
※ 授業の形式等はインタビュー当時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
※インタビューは感染症に配慮して行っております。
- 古宮嘉那子先生
- 知能情報システム工学科
- 知能情報システム工学特別講義(自然言語処理)