「人工知能」
~AIを賢く使える人に~
第38回は、工学部3年生向けの授業「人工知能」について、知能情報システム工学科の藤田桂英先生にお話を伺いました。
〈プロフィール〉
お名前:藤田桂英先生
所属学科:工学部知能情報システム工学科
研究室:藤田桂英研究室
趣味: TVゲーム
技術を教えるだけじゃない! 人工知能の基礎を授ける
―学部3年生の「人工知能」の授業では、どんなことが学べるのですか?
この授業は、「人工知能(=AI)って何でしょう」という問いかけから始まります。「人工知能はこういう方法で作られています」「こんな技術が使われています」といった内容を学びます。後半では、実際に最新の人工知能の技術がどんなところに使われているのかを扱います。例えば、ロボットやチャットボットと対話するとき、システムには人工知能が入っています。検索エンジンでも、検索順位はランダムではなく賢く出てきますよね。つまり、欲しい情報を上に提示してくれます。賢いのはなんでかというと、人工知能が入っているからです。また、AIがパズルやゲームを解く事例も紹介しています。最後に、私の専門であるマルチエージェントシステムについて説明します。
―実際にAIを作れるようになりますか?
作れるようになるかは人によります。実際にAIを作るためにはプログラミングの技術が必要です。プログラミングができれば可能だと思います。
―授業をされるなかで工夫していることはありますか?
あります! 一つ目に、「こんな問題点をこんな技術が解決したけど、対抗馬がでてきて、こっちが勝ったよ」といったストーリーを伝えることを意識しています。最新の技術を知るだけでなく、その技術ができた背景も知ることで理解を深めてもらいます。
二つ目に、演習問題を入れるようにしています。「この方法を使うと、こういう動きをするから再現してみてね」とか、迷路をAIが解くのはどういう動きをするのかといった演習問題を毎回2~3題出題し、実際に手を動かして知識を身に付けられるようにしています。
三つ目に、技術を教えるだけでなく、その技術が何に使えるのかを教えるようにしています。例えば、AIが迷路やパズルを解ける方法で、「ナップザックに荷物を入れるとき、どうやって入れると一番効率が良いでしょう」というパズルも解けるようになります。現実の世界と今回の授業で学ぶことがつながると、興味を持ってもらえるのではないかなあと考えています。
アルゴリズムや最新の技術だけを教えることもできますが、それだけでなく、その先の学習にもつながるように考えて工夫しています。
―この授業を担当されていてモチベーションになること、楽しいなと思うことはありますか?
学生さんが反応をくれたり、質問してくれたりするのが嬉しいです。「この授業でAIに興味を持ってくれたんだな」と思うと嬉しいですね。
AIがたどってきた道
―学生が興味を持ちやすい話題はありますか?
あります。質問が一番多いのは導入の部分で、AIとは何かという話やAIの歴史についての話です。
―AIの歴史、気になります。
AIってずっとブームになっていたわけではなくて、今が3回目のブームで、途中で冬の時期を2回経験しているんです。
1956年に初めてArtificial Intelligenceという言葉ができました。そのあとにAIの研究者にとっては凄く良い時代がきました。しかし、この時代のAIは特定の条件下の問題しか解けなかったため実用性に乏しく、一度ブームが去り、冬の時代が来ました。その後またブームが来て、今度こそ産業にしようとしたけどまただめで。2000年くらいで一番下火になっていたんですね。でも、その間も人工知能の研究は続けられていました。新しい技術もできました。一番大きかったのはウェブができたことです。ウェブの中は図書館と比べ物にならないくらいデータで溢れかえっています。これによりAIがデータを獲得し、さらにコンピューターが安く高性能になり、ディープラーニングというブレークスルーも起きて今に至ります。
―初期のAIと現在のAIの変遷を教えてください。
AIの仕組みを少し解説すると、人間の脳を再現する形で作られているものもあります。人間の脳の中には情報や刺激を伝達する無数のニューロン(神経細胞)があり、ニューロン同士はシナプスでの反応を介して繋がっています。ニューロンはこれまでの刺激に応じてシナプスの数やそこでの反応の強弱が変わります。コンピューター上にはニューロンが“ノード”として再現されており、各ブロックは入力された情報を処理して次のブロックへと情報を伝えます。ノードもこれまでの学習から情報の送り方を変えており、これがニューラルネットワークと呼ばれる所以です。このブロックが複雑な網目状につながることで、脳の中のニューロンのネットワークを再現しているのです。
現在、技術の発展によってこれらのブロックの数・つながりの数が増加しています。これによりAIがさらに人間の脳に近づき、ディープラーニングが可能になりました。しかし、基本的な考え方は昔から受け継がれたものです。今あるAIの会話機能やゲーム上の挙動も、簡単なものはかつての研究の中でもできていたのです。
人工知能を賢く使う
―この授業で学んだことで、社会の見方が変わることはあるでしょうか。
あると思います。裏にあるアルゴリズムの仕組みを知れば、「じゃあ自分はこうやって使おうかな」と考えることができます。例えば、ウェブの検索でなかなか欲しい情報が得られないときは、検索ワードが不適切なことが多いのですが、その仕組みを知っていれば最適な検索ワードに変えられます。このように、人工知能の使い方がうまくなります。
―情報社会で生き抜くために必須な能力ですね。
はい。学生には、AIを賢く使えるようになってほしいです。そのために仕組みを知ってほしい。さらに、知能情報システム工学科の学生には将来的にAIを作る立場になってほしいので、その基礎を築ける講義にしたいです。
藤田先生の「授業百景」はここまで!
藤田先生の今に至るまでの経緯、研究への想いについて詳しく知りたい方は「「藤田桂英先生」~AIが社会の一員になる時代に向けて~」もあわせてどうぞ!
文章:わらび
インタビュー日:2021年06月25日
※ 授業の形式等はインタビュー当時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
※インタビューは感染症に配慮して行っております。
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