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旧授業百景

「電磁気学応用」

~異分野の研究を融合できるようになるには?~

2021.02.04

第25回は生嶋健司先生の授業特集です!
今回は、生嶋先生の授業づくりについて教えていただきました!

生体医用システム工学科2年生向けの授業「電磁気学応用」を取り上げます。


〈プロフィール〉
お名前 生嶋健司先生
所属学科 生体医用システム工学科
趣味 リクガメなどの動物を飼っています。

―電磁気学応用とは、どんな授業ですか? 電磁気学というのは物理の科目のひとつです。高校でも電磁気学を勉強すると思うのですが、力学と比べると分かりにくいというイメージがあるみたいですね。直感的に見えない電場や磁場などが出てくるので。けれど、直に関わる産業というのも非常に広いので、工学系の学生さんとして最低限知っておいてほしいという科目になっています。
―授業に関してこだわりはありますか?  電磁気学には各論や細かい現象がたくさんあるのですが、その各論の細かいところを話すのではなくて、電磁気学という学問体系の全体像を把握してもらうようにしています。そして学生がだんだん専門に進んでいったときに、自分の専門分野に近い各論を自分で勉強できるようにする、ということを目指しています。

―そうなのですね!全体像を把握してもらうために工夫されていることはありますか?

 電磁気学が分かりにくい理由の1つは、電磁気学には各論がたくさんあって(電気回路も入ってくるし、物質が入ってくると誘電体とか磁性体とかも入ってきて、さらに電波、光、放射線も電磁気の現象なので)色んな現象がいっぱい入ってくるので、それを一個ずつやっていると、何を心の支えとしていいかわからなくなることだと思います。けれど、実は電磁気学はたった5つの式から成り立っていて、そこから派生しています。

 伝統的な電磁気学の教え方というのは、各論から入って最後に基本法則が出てくるという流れなのです。例えば、最初は電場しかない場合に成り立つクーロンの法則から始まって、次は磁場だけがあるときに成り立つアンペールの法則の話になって。そういう話を散々したあとに、最後の方で実はマクスウェルの方程式というたった4つの方程式とローレンツ力(力学)と組み合わさる1つの式、合わせて5つの式から成り立っているんですよと種明かしする、というのが伝統的な電磁気学の授業です。

 しかし、私の授業では伝統的な教え方ではなく、一番基本となる法則(電磁気学という理論の枠組みの中では証明できないという前提)からスタートして、その派生で生まれる現象を説明するというスタイルで教えました。日本物理学会とか応用物理学会のほうでも、伝統的な電磁気学の教え方で本当にいいのかという問題提起がされているところなので、その改革を進めている教科書をつかって、授業をしました。

 つまり、この授業では、土台を一番重視したので、重要なことから順番に、困ったときに何を心の支えにするか、何をスタートにして考えるべきか、というのを意識したつもりです。

(オンライン授業の様子)

―土台が大事なのですね!

 いっぱい法則が出てきてそれをいっぱい覚えて利用するだけだと、新しい現象に出会ったり、新しいテクノロジーを生み出したりするときに、自分でゼロから考えることが難しいのではないかと思っています。

 教科書を見ても答えがない話を考えるときに基本的な土台がスタートラインとなります。なので、力学も電磁気学も関係なくおおもとにある土台をしっかり理解してもらいたいです。

 特に、生体医用システム工学科は、医と工の連携をするなど、特殊な状況にあるため、そのような土台の方を優先しました。

―学生に授業を通して身につけてほしい力はありますか?

 生体医用システム工学科には、物理からバイオや医療に近い科目もあるなかで、異分野を融合するようなことをしていくときに重要なのは、「自習する力」だと思います。異分野の研究を融合しようとするときに、自分の知らない分野もある程度自分で勉強していくことが将来的に必要です。

 そのため、授業では予習ということをすごく強調しながらやってきました。高校までは復習でいいけど、大学からは予習を優先してほしいということは学生にも伝えています。将来社会に出たら、自分で勉強していくしかありません。独学で勉強するということは予習と同じなので、その習慣をつけて欲しいです。

―授業を通して伝えたいことはありますか?

 電磁気学は苦手意識がある人が多いんですけど、本当はシンプルな理論体系で、たった5つの式がもとになっていて、物理学の理論体系のなかで最も美しいといわれています。話題が多いから知識としては豊富になっちゃうけど、実はそんなに難しくなくて、ものすごいシンプルな理論体系、それをわかってくれると嬉しいです。シンプルで役に立つし、本当はいいことばっかりなんですよって伝えたい(笑)  

 どの先生もそうだと思うけれど、学生が授業を通して、思ったよりも面白いということを分かってくれてきているときは楽しいですね。

生嶋先生の「授業百景」はここまで!
生嶋先生の現在に至るまでの経緯、研究への想いについて詳しく知りたい方は「
#25「生嶋健司先生」〜理想は19世紀の実験家?!不思議なことを確かめる物理の研究〜 」もあわせてどうぞ!

文章:あだち
インタビュー日:2020年12月4日

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
※インタビューは感染症に配慮して行っております。