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旧授業百景

授業づくりは??づくり、仕込みを重ねて毎年おいしく🍛 vol.1

2020.07.08

第17回は田中剛先生の特集です!

田中剛先生の授業について学生からは、以下のような部分が授業の魅力として挙げられていました。

【微生物学】
毎回の授業で小テストがあり、プリントに穴埋めがある。
〇新しい発見の歴史などを交えながら、微生物の分類など微生物についての理解を深めさせる。
〇難しいと思われるようなところはゆっくりと丁寧に教えてくださった。

そんな田中先生の授業づくりの肝を聴いてきました!


(コーノ)―本日はどうぞよろしくお願い致します。(田中剛先生以下スペース) はい、よろしくお願いします。

田中剛(たなか・つよし)先生
生命工学科

―早速ですが、今回選ばれた微生物学の授業について伺っていきたいと思います。授業の構成などで意識されていることなどありますか? そうですね…まず専門のことなので、やっぱり教えやすいっていうのはあります。全体の流れとしては、前半と後半があって、途中に中間試験があります。
 そもそも微生物学というのは、環境学と同じように実はすごい広い分野で、病気を扱う微生物学もあるし、環境を扱う微生物学、薬作りや、微生物発酵のようなお酒造りに関わるものもある。その中でも生命工学科の学生さんが多く希望する、その応用である食品とか製薬といった話につながるようにしています。

学問が立ち上がり始めた当時の人々は、何を考えていたか

 最初の前半はガッツリ、微生物はどういうものなんだっていう定義をやります。そこは多少座学の要素が強いというか、覚えてもらう要素が多い、ほんとに基礎微生物学です。そこで、なぜ人が微生物を発見するに至ったかとか、18世紀のイギリス人が顕微鏡をのぞいた時にどんなものを見たかみたいな話や、微生物という概念がない人がどう考えていたのかっていう話をすると、伝わりやすい。まず学問に興味を持ってもらうっていうことは確かに意識して話をしています。
 例えば、病気の発見。ヨーロッパで何百万人と亡くなったペストの原因が実は微生物で、そこでヨーロッパで初めて微生物学っていう学問ができたっていう話をする。もし自分達も当時その場にいたら同じように悩んでいただろうし、その当時の人が何を考えていたかっていうのを追いながら。
 研究者だけでなく、一般の人たちも、どうやらその辺の川を泳いだらうじゃうじゃ微生物がいて、体につくらしいっていうことを感じちゃったんだよ、という話をするようにしているかな笑。
―面白いですね!歴史っぽいところからアプローチしていくんですね。

 基本的に、一回授業やったら多少覚える要素もあるので小テストをしています。授業の最初に前回やったこと覚えていますかっていう、簡単な5分くらいで答えられるようなことを、小さい紙に書いてもらっています。そこで理解度を問う。

 微生物学の範囲はとても広くて、あらゆることは出来ないので、最初は分類だとか、どういう風に学問が成り立っているかとか、ほんとの基礎しかやりません。免疫学や疫学まで話したら時間が無くなるので。後半は、感染性にかかわる微生物と環境や物質生産に関わる微生物の話をします。これも教科書からの言葉で、生物学に限った話じゃないんですけど、学ぶっていうのは正しいことを発見するわけじゃなくて、少なくとも今までにどこまで分かってきたかっていう歴史的な背景を学ぶことで、それを通して学問が成り立ったことを、まず伝える・教える。

100年前から今日までと、今日から100年後を見据えて

 ちなみに、農学部だったなら、ウーズのスリードメイン説とかってやった?笑
―あの、やったとは思うんですけど、たぶん私が興味なくてあんまり聞いてなかったかもしれないです…笑。 はっはっは笑。説明するとね、今だったら生物は3つに分けて考えるのが一番リーズナブルということになってたりするんですね。それをスリードメインっていって、1990年に、分子系統解析のリボゾームRNAの配列の進化速度を計算すると、
―(´・ω・`)… ふふっ笑。聞かなくてもいいかもしんないな笑?
―いやいや! 聞かせてください笑。 要するに、100年前は違う考え方(理論)だったし、それは今も変わりつつあるんですね。最新の研究だとスリードメインの説明はやっぱりおかしくないか?っていう話もあったりとか。だから授業では、あなた方(学生)が今後、研究を続けていくことによって変えていくことですので、今までどんな風にみんなが考えてきて、例えば18世紀はこんなこと考えていて、20世紀はこんなこと考えていて、さらにこの後どうなるか?を考えてもらいたいっていう話をします。
―なるほどです。仮説を立てて一旦はそれに沿って行くけど、不具合が起きたらまた違うものを積み上げていって、その前にまずは今までの振り返りをしようっていう感じですかね。 そうそう。
―なんというか、点々で覚えるんじゃなくなく系譜ごと頭にいれるみたいな…。 うん。やっぱり、歴史学に近いようなことがあるかもしれないですね。

前半の基礎知識は前フリ、後半の応用で必要「覚えてる?」

―後半の授業ではまた違った話をするんですか?  今、後半に入っていて、今日の授業であれば、遺伝子組み換えに関わる遺伝子の導入方法。歴史的な背景のある形質転換っていう遺伝子組み換えに使われる方法論は、1928年に発見された現象をもとにして…っていうのを前回の授業でやっていましたので、今回は具体的に、今は現場でどんな遺伝子組み換えがされていて、いろんな微生物がどんな風に作用して、っていう話をするんですけど。
 前半ではそれに関わるような基礎的な情報、プラスミドってこんなんだったよね、とか、例えば第3回目の授業で付着繊毛があるよっていう話をしておいて、「あの時の話はあまり覚えてないかもしれないけれど、これが今実際に遺伝子組み換えで使われており、繊毛っていうのが接合伝達に効いているんだよ」って振り返る。前半の基礎微生物学のところを前フリにして、それを後半にちりばめていくって感じですね。
 するとなんか、前半の多少覚えなくちゃいけないところも、そういうことね、ということでつながりとともに分かるでしょ。
―いいですね!こうやって使うんだ、ってなりますね。 工夫らしい工夫っていうとそれぐらいしかしてないような気がするんですけど笑。
―いやいや!素敵な工夫だと思います!


田中剛先生の「授業百景」vol.1はここまで!
vol.2ではじっくりコトコトスライド作りについて詳しくお聞きしました。
田中剛先生の「授業百景」vol.2はこちら

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。