授業づくりのスタートはゴールを決めることから⚽
第11回は英語の授業で定評のあるStephen先生の特集です。授業にダイナミクスを生むテクニックは必見!
Stephen先生の授業について、学生からは以下のような部分が授業の魅力として挙げられていました。
【English Presentation】
〇本格的な英語の授業で、生徒のやる気を引き出すのが上手だった。
〇先生がずっと話しているのではなく、生徒が主体の授業で非常に良かった。実際に、みんなの前でプレゼンテーションを行わせることで、英語で発表するコツや面白さ、難しさを体験してもらおうとしていた。
〇普段話さない同級生と話すきっかけにもなった。上手な人の表現を聴くことができたのでよかった。
そんなStephen先生の授業づくりについて詳しく教えていただきました!
(コーノ以下―)本日はどうぞよろしくお願い致します。(Stephen先生以下スペース)どうぞよろしく!
大学の目指すゴール、コースで目指すゴール、授業で目指すゴール を決める
―早速ですが、普段の授業づくりはどのようにされていますか。 まず、3つのゴールというのを意識している。大前提として、大学が(教員の)僕に求めていること、つまり「何を学生に教えるか」というのを確認するね。これが第一のゴール。特に、シラバス作りは大事で、分かりやすいシラバスがすなわちいいシラバスだと思う。
そして、現状の学生たちの英語レベルや課題・問題は何か、彼らは将来英語を使うのか、使うとしたらどういう英語か、ということを確認して彼らの成長をどう手助けできるか考えている。
次に、コース(科目)ごとのゴールを定める。例えば、discussion class というコースなら英語を使うときのミスは多少許して、完璧さではなく英語を使って話すときに「confidentであること、make opinion できること」がゴールになる。
最後に、授業ごとのゴールを定める。一回ずつの授業で「I agree with~というフレーズが使えるようになる」とか。
授業づくりはゴールを決めてさえおけば、そこに向かって組み立てていける。
筆記用具と水筒をもって教室の前へ。
―授業をしている中での工夫はありますか? まず、僕の授業では学生が集中するための空間を整える。教室に学生が集まったら、筆記用具と水筒以外の荷物を教室の後ろの机に置いてもらって、全員が教室の前から順に座るようにする。日本の学生だと、なぜか教室の後ろとか端の席が人気だよね(笑)。あとその時に、男性の列と女性の列をつくって交互になるよう座るよう指示する。なぜならこれから先、男女が混ざって作業する空間の方が多いだろうからね。こうすると、教室の前と後ろに学生がバラバラに座るということもないし、普段のおしゃべりする仲間たちと離れる。そうすることで、学生には授業を受けるぞというスイッチが入る。授業の回が進んでいくと、学生たちも教室に来たら荷物を後ろにおいて、自然に前に座るようになる。これは授業内で発言を促したい場面が多い科目でのことだけど。
次に、舞台が整ったらタスクをこなしていく。タスクっていうのは、黒板の説明を聞くとか、隣の人と30秒話すとか、学生が学習するための一つ一つの動きという感じ。授業全体の流れとしては、今日の授業のゴールの確認をして、タスクをして、途中でフィードバックをして続きのタスク、そしてゴール達成できたね、と最後に確認する。
―授業の最初に今日のゴールが示されて、最後には到達できたか確認できる、というのが授業全体の見やすさ、わかりやすさになりますね。
座席位置の例
・教室に集まってくる学生が自然に着席する場所(左図)のまま授業を始めるのではなく、教室の前から着席させて男女が隣り合うようにする(右図)。
・筆記用具と水筒以外の荷物は教室の後ろに置いておく。
視線と動作を誘導して集中の質にバラエティを
能動的に学習できるように、タスクにはバラエティをもたせている。ずっと先生の説明を聞くとか、プリントを読むだけでは飽きちゃうからね。バラエティというのは、それぞれの作業に必要な集中の質や動作、時間で異なる。さらに、それらの組み合わせでいくつかに分けられる。
例えば、ウォームアップとして短めの作業なら、30秒隣の人と英語で「今日の朝ごはんについて話して」とかね。動的で、口を動かして、瞬発的なタスク。中盤なら、黒板にキーフレーズを書いておいて、「キーフレーズを使いながら10分間、近くの4人と話して」とかね。さっきのタスクより、じっくり取り組むタスクになる。他には、15分でプリントに書き込むタスクなら、静的で、手を動かすタスクになる。僕は学生が一つのタスクをしている間に、次のタスクの準備をしたり、教室を回ってフレーズがちゃんと使えているか確認したりする。
―確かに、タスクにバラエティがあると授業にメリハリが出ますね。 そう。ダイナミクス、動作を変えるというのは大事。
学生をミックスして、刺激をつくる
加えて、学生同士をミックスするというテクニックもある。例えば、会話のタスク。座っている学生を移動の列と、固定の列に分けて、学生全員に立ち上がってもらう。 一回30秒ずつ隣の人と会話をして、移動の列の学生には一回ずつ後ろにズレてもらうようにする。それが5回ぐらいになるかな。
こうすることで、教室に優秀な学生がいれば、彼らがいろいろな人と会話するから他の学生にとっては刺激になる。「こういう言い回しもできるのか」とかね。もちろん、仲良しグループの人以外ともしゃべるから、それもいい刺激になる。せっかく同じ大学で同じ授業をとっているなら、色々な人とコミュニケーションをとったほうがいいと思う。
―確かに、Stephen先生の授業で初めて話した友達と趣味が同じだったというので仲良くなったことがあります。あと、留学に行ってた友達の表現を聞いて真似しよう!とか色々発見がありました(笑)。 それは、狙い通りだ(笑)。
時限が違えば、学生も違う。
目の前の学生を見て、スムーズもジグザグもゴールに向かって。
とっても重要なことなんだけど、学生は一人一人違うんだよ!授業をしている先生は分かると思うんだけど(笑)。
例えばね、1時間目のクラス。学生たちがゴールに向かってスムーズだ、順調にできているから安心して授業ができたとする。そして、2時間目のクラス。おやおや、なんだか飲み込みが悪いなってことがある。ジグザグとゴールに向かっていく感じ。そういうときのために、もしプランAがダメならプランB、プランAができたらプランCとか、いくつか段取りを考えておく。これである程度は対応できる。
最初の頃はこんな感じで、予想をいくつか立ててその対応を考えたりしていたから、授業の準備には毎回1~2時間くらいかかって大変だった。英語のテキストには大抵、この流れで学習しましょうとか、1,2,3ってやることの指示が書いてあったりする。だけど、それに沿って進行するのではなく、なるべく目の前の学生を見ながら、彼らに合った授業の進行を考えるようにしている。
それと学生には、なぜわからないんだ!ってイライラしないで、どうしたら彼らはより理解するだろうと考えるようにしているよ。
―それは、とても大変ですね。 大変だよ!(笑)。あと、やる気のない学生ももちろんいるね。丁寧に準備をして授業に臨んでも外の窓を眺めていたりしていて、全然聞いてくれないからひどく悲しいこともあった。そういう時は、「彼らにとって英語は重要なのかな」って考えたりするようにしている。なぜなら、彼らのうち必ず少数は将来英語を使う必要がないからね。そう考えたら、肩の力が抜けたかな。
あとは、やっぱり日本の学生からするとオーバーリアクションに見えるからかな、受け入れてもらえないこともある。他にもたぶん、高校までの英語の授業とかで何か嫌なことがあって英語に消極的な場合とか。まぁそういうこともあるかな、と思うようにしている。
Stephen先生の「授業百景」はここまで!
続いては、Stephen先生の経緯について詳しく教えていただきました。
「先生大図鑑」はこちら!
※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。