説明するプロですから✨ vol.1
第15回は長澤和夫先生の特集です!
長澤先生の授業について、学生からは以下のような部分が授業の魅力として挙げられていました。
【生命有機化学Ⅱ】
〇説明が本当に分かりやすい。分かるように間に細かな演習を挟むのでついていける。これが中々他の授業にはない、ホント。
〇本当に分かりやすいです。ありがとうございます。
〇種々の生命現象を有機化合物の性質の観点から理解できるようにする。
〇板書がわかりやすい。
そんな長澤先生の授業づくりの肝を聴いてきました!
(コーノ以下―)本日はどうぞよろしくお願いいたします。(長澤先生以下スペース)よろしくお願いします。
私は、教えやすい科目と教えにくい科目があると思いますよ。それと、学生も面白いと思う科目とつまらないなと思う科目が、それぞれあると思います。基礎系が好きな人もいれば応用・演習系の科目が好きだって人も、それぞれいますよね。有機化学は基礎系科目だと思うのですが、コーノさんはどちらが好きですか?
―どちらかというと応用・演習系の方が楽しいですね。でも、あとから基礎系もちゃんとやらなきゃいけないなと思いました。 そうですよね。 基礎系科目は時につまらないと感じるかもしれないけれど、研究の基盤として将来絶対に必要になる科目ですよね。
―長澤先生的にはどの科目が教えやすいですか? 笑。有機化学は僕にとっては一番教えやすいですよ、もちろん。あと、有機化学は基礎系の科目の中でも、教えやすい科目の一つだと感じています。笑。
黒板の端に書いておく
本題に入りますと、僕が心掛けていることは、例えば、講義の中でこれだけは伝えたい、と思うことを、最高3つぐらいに絞っています。そうすると、講義のストーリーはとても単純になると思うんです。あまり複雑にしない。そして、複雑なことや興味を持ったことは、学生自身でもっと調べたり、勉強してもらえばいいと思っています。とにかく生命工学科の講義なので、生命工学を学ぶ上で、将来研究する上で役に立つようなポイントを念頭に、これだけは教えておかないといけない、という意識で、あまり沢山詰め込まないようにはしていますね。
また伝えたいポイントは、講義の前に黒板の端に書いておく。それを時々確認しながら、講義をします。
―脱線しづらそうですね。 脱線はしますよ。
僕は、毎回、講義を行うために講義ノートを作り変えます。講義の準備はしっかりしますが、授業中には講義ノートや教科書は、ほとんど見ない。だから時々よく講義内容から脱線はします。
―見ないですか(゜゜) 専門だから笑、手元の資料を見ないで話をする。でもその方が、学生の講義を聞く態度も変わると思いますよ。学生にはその方が、講義内容も説得力があると思います。
多くの先生方もご経験あると思いますが、学会などで講演するときに、資料やメモを見ながら講演していたら、説得力がない。それと一緒です。講義でも、講義ノートや教科書に頼らず自分の言葉で伝えようとしたら、より強く学生に伝わると思います。やはりそこはとても重要だと思います。
だから僕は、講義でもそういう資料は極力見ない。卒論発表の時に、メモを見ながら発表しました?しなかったでしょ?
―じゃあ、特に練習したりとかはしないですか? しない笑。
―卒論発表の時はメモを見なくて済むように、めっちゃ練習したんですけど笑。 それでいいんですよ。そういう講演や発表を僕らはもう、学生の頃から長い間、ずっと経験して積み重ねてきているから。
―そうですね笑! それは、説明するプロですから。だから、講演と同じように、自分の研究を伝えるつもりで、講義の内容を伝えるというのが、基本的な姿勢にあればいいと思います。
先生も学生も現在地を確認できる
ただ、90分って長いから、自分のメモとして、これとこれとこれは伝えなきゃいけないという骨子は必要です。でもそれだけあれば十分。私はそれを黒板の端に書いておきます。これは自分のメモとしても必要ですし、学生にも伝えておくと、講義を聞いていて迷子にならない。
例えば有機化学の講義で、「今日はアルコールの反応を勉強します」と伝えます。そして、黒板の端に【アルコールの反応】と表題を書き、さらにその下に【酸との反応、脱離反応、置換反応】の大きな3項目を書いておきます。さらにその各項目の下に、「アルコールのE1反応、SN2反応、エーテル化」などの少し細かい内容もメモがわりに書いておくのです。そうすることで、自分でも講義内容やその順番を間違えないし、メモを確認し意識しながら講義の展開を組み立てることができます。学生も迷子になりにくいと思います。
でもそれだけのメモなので、講義内容はよく変わりますよ。準備した講義内容のためのメモなのですが、学生さんの表情などから話す内容が脱線することは当然あります。でもメモがあるので、元に戻りやすい。
―すごいですね… 講義を始めた最初の頃は余裕もなく、大変でしたよ。おそらくどの先生方もご苦労されたと思います。90分の講義の準備に、それこそ3時間以上かかりました。大学で教職を取られましたか?
―はい、取ってました。
教職課程で教育実習に行った時、例えば50分の授業を行うときには、2時間以上の準備が必要だったことを覚えているのでは?またその時に、授業の時間配分、例えば導入にはどれくらいの時間をかけて、その後の展開にどれだけ時間をかけて、などを細かく計画して、授業全体の話の流れを決めましたよね。そういうトレーニングは、大学の講義でも必要で、それに慣れるのにはやはり1〜2年はかかるのだと思います。
学術講演でも、「今日のcontents」が書かれたスライドを最初に出される先生もいらっしゃいますよね。それを私は講義の場合に、黒板の端に書いておくわけです。それを見ながら、講義の時間配分、講義の組み立てに活用します。学生にも、どの部分を話しているか、伝えます。毎回の講義の全体像もわかるのだと思います。
―今の現在地が分かるので、いいですね。 そうなんです。
普段は宿題として、授業時間が余るなら小テスト
―授業1コマ(90分)の流れはどのような感じですか? 毎回の講義は、前回の講義の最後に出すクイズの解説から始めます。クイズはその講義の中で一番大事なポイントから2つくらいを出題します。学生さん達は、4日間ぐらいかけて解いてきて提出する。それを次の講義までに私がコメントをつけて返却します。
このクイズの解答を講義の最初に解説します。そうすることで、前回の講義の大事なところの復習になる。この解説に大体、15分から20分位を使います。その後、新しい内容について講義を始めます。
提出してもらったクイズはコメントをつけて返却されるので、学生さん達は解説を聞きながら、前回の講義を復習してもらうことになります。クイズは講義のポイントから出されます。期末試験にも出題する場合があります。期末試験の点数が悪い場合は、時々学生さんを呼び出して、試験勉強をどれだけ頑張ったか聞いたりしますが、そのとき必ず返却されたクイズを持参させ、日頃の勉強状況を確認します。なお提出されたクイズはPDFで保存しているから私の方でも大体の勉強過程はわかるのですが、持参してきたクイズ用紙を見ることで、講義で解説したときの復習状況がわかります。
―ちゃんと履歴が残るんですね笑。 残るし、誰と誰が一緒に勉強したり、相談したりしているかも全部分かりますよ。時々2枚重ねて透かして、ああ一緒だ…とかありますよ笑。やったでしょ?笑。
―やったことないです笑。出来ないときは出来ないまま出します!
―ちなみに、何人ぐらい履修されてますか? 大体80人弱じゃないかな。毎回の講義後に提出されるクイズへのコメントと採点をするので、結構大変なんですよ。
あとは、講義時間が余りそうなときには、クイズを出す代わりに、講義の最後に確認小テストを行うときもあります。その時は、講義を始める前にあらかじめ、「今日は最後に確認テストをします」と宣言しておきます。たまには確認テストもいいですよね。講義を聞いた後で、どれだけ理解しているか、測ることができるし、自分の教え方を反省することもあります。以外と小テストを行う方が、よく講義を聞いていたりしますね。
長澤先生の「授業百景」vol.1はここまで!
続いて、授業で役立つおすすめツールを教えていただいたvol.2はこちら!
※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
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