基礎は先生が、発展と横道は学生が vol.2
赤坂先生の「授業百景」vol.2です!
4年生から評判!論文を読むタイミングって意外となかった…
―授業の中で、英語教育というのは意識されていますか? 英語教育そのものは意識していないですね。でも、生態学の分野で、英語で論文を読み書きするのが当たり前になっていることは意識しています。そのため、学生に英語を読み書きすることが必須となる課題も出していますが、英語論文を読まなくても済むようにしています。
―!詳しくお聞きしたいです。 授業プリントに授業の内容と併せて区切り課題というものを提示しています。上の方の課題(S5)は日本語の資料を読めばできるものですが、下の方の課題(S6)は英語の論文を読まなきゃいけない。こういう課題10個の中から、大体一人1個か2個ぐらい選んで、全部でA4・2枚に収まるように課題をやってもらいます。1個の課題を丁寧にやってもいいし、複数をコンパクトにやってもいい。学生の興味次第で取り組み方を決められるようにしたいので、縛る必要はないと思っています。レポートの内容は、単なる要約だけでなくて、自分の意見をちゃんと書く必要がある形にしています。その辺はまあ大学の講義なので、出来るだけ学生の興味にあうようにやればいいのかなって。
質問しないなんて MOTTAINAI! 発言がないと SONZAINAI…
―言葉選びや空間づくりなどで工夫されてることはあったりしますか。 基本的に、どんな発表でも、どんなことでもいいから、ちょっと簡単なことで恥ずかしいから発表しないとか、質問しないっていう雰囲気には極力ならないようにしたいなとは思っています。発言しないことの方が良くないというかもったいないことだよーっていう。学生が講義するときも短いですが質疑の時間は設けています。
それは、研究室に入ってからのゼミでもそうだと思いますけど、ただいるだけは無駄なので、できるだけ積極的に質問やコメントができるようになると良いなと思っています。
―大事ですね。私も自分より年下の人たちが集まるような会だと、率先して簡単な質問を聞くようにしてます。そういう雰囲気づくりで肩の力が抜けると良いですよね。 そうですね。あと、細かい話ですけど、手をあげてもらうときに「何かあるひとー?」って口だけで言うよりは、(先生も一緒に手をあげて)「何かあるひとー?」ってやった方が学生や聴衆も手をあげやすいとかありますね。
―(゜゜)!そういうのお聞きしたいです笑。 そういうジェスチャーは、普通のコミュニケーションの中で身に着けることだとは思いますけど、やっぱり上手なのは、大学の先生というよりは小中学校の先生や学芸員さんだったりするのかなと。色々と考えてやってらっしゃるし、そういうことは大学教員よりもできると思っているので、そういう人たちが話しているのを聞いて、ああ上手だなって思ったことは真似しますね。
そういうネタの仕入れは学会でのこともあるけど、小中学校などの先生が何かやっているのを見た時のこともあります。幼稚園の先生が特に上手かもしれないですね。
―そうなんですね笑。小中高って進むと「どう思う?」とか問われる機会が少なくなっていった気がします。
あとは飴とムチの、ムチの部分ですけど、ちょっと強制的にする場面もあります。学生の講義の場合は進行も含めて学生に委ねているので、質問がないこともそれなりにあります。そういう場合、場合によっては「当てるよ」と言ったりとか、ちょっと背中を押すこともありますね。自分から発言はしないけど、実はよく考えているっていう子は、一定数いる気がしています。農工大は素直でいい子が多いので、それで逆に控えめになっちゃっているかなと。
―ありますよね、きっと。コメントカードはめっちゃ書くのに…とか。 そうそうそう!自分が発言しないとそこに存在がない=価値がないっていう感覚が、特に欧米では、会議もそうだし議論の場でしゃべらないことは基本的にいないことと一緒っていう扱いになるから、自分の言いたいことは言っていいという感覚に、自然になると良いと思っています。
あと、学期の最初の授業の時は、授業が早かったら言って、コメントで書いてって伝えています。で、大体、最初の数回は早いって書かれます。自分の中でスピード落としているつもりでも、学期の最初はペースが掴めなくて、終わらせなければと急いだりとか、これも言いたいと内容が増えちゃったりするので。一番いいのは、その場で「早いです」って言ってくれた方がいいけど、なかなか言ってくれないんですよね。だけど、コメントカードには書いてくれるので。
―そうですね笑。私もエアコンの温度が実は寒いとか、なかなか言えなかったりします笑。 そうそう、なんかすごい権利意識が弱いというかやさしいというか
―ありますね笑。
持続可能な授業は気楽にやりつつ、気合いを入れつつ
―授業や教育に関して、抽象的な意識だったり心構えなどありますか? そうですね…。一つはできるだけ授業を頑張りすぎない、 っていうのは考えています。もちろん、何もやらないという意味ではなくて、頑張りすぎちゃって続かなくなるよりは、ある程度自分の納得できる所やって、あとは持続可能な範囲で頑張るということですね。もう一つ、学生は授業には興味がないっていうことを前提にして、いかにそれを面白いと思ってくれるかっていうのを、意識としてできるだけ持ちたいな、と思っています。たぶんそういう風に思ってやった方が、逆にやりやすい。
―ちょっと気が楽になりますね。 そう。気楽にやりつつ、学生は興味がない前提だから、惹きつけなきゃいけないっていう意識も強くなると思うので。
―学生を惹き付けられた、と思う瞬間ってありますか? 笑ってくれたり、まなざしが真剣になったりするときですかね。自分が面白いと思っていることはこちらの喋り方が違って、面白いと思っていることが伝わるような喋り方になっているのではないかなと思いってます。学生に確認はしていませんが。
あとは、惹き付けるためにというのであえて当てたりすることはないですけど、質問形式で、例えば、ある問題を出して、答えとしてはAとBの選択肢を出しておいて、どっちでしょうか?っていうのを聞いておいて、実は答えどっちもあってますとか、ちょっと「えっ?」て思わせることができるといいですけどね。そうすると学生が、「どういうこと?」ってなるじゃないですか。それでちょっと興味を持ってもらう、とか。
―なるほどです。 基本的には、教室で聞いたことはすぐ忘れると思っています。でも、それが自分で調べことだと忘れないので、それなら内容を覚えさせるより、調べ方を覚えること、トレーニングすることの方が後には生きると思ってます。
知識や情報を集める、整理する、教えあって刺激する
―調べ方…それは講義などを作っていく過程で、ということですか? そうです。調べるやり方までは講義で教えるような時間はないですし、講義のお題目が違っちゃうのでしないですけど、それでも自分で繰り返しやっているうちに、これよりこっちの方がいいかなっていう試行錯誤は、考えている学生はやって身につけていると思っています。
だから、調べ慣れているかっていうのは重要だと思います。なにかの記事で、大学生と大学院生の人の仕事の明らかに違うところって、検索能力の高さだと書いてある文章を見たことがあって、その違いは大事だなーと思って。あと、その情報を検索だけじゃなくて、整理するとか集約するっていうのを含めて、情報の処理とか取りまとめができる事は、たぶん、大学生の時に講義で得る知識そのものよりも将来、生きるのかな、という風には思っています。
知識はどんどん陳腐化するし、それこそ知識だけだとAIに変わられちゃうので。でもAIがより今の段階では苦手なことに、情報を質によって分類や整理することがあると思います。専門内容とは違いますけど、結果的にAIにとってかわられない人材を作ることに繋がっていくと良いなとは思っています。
あと、効率良い人は全部読まなくても、ばばばっと要点だけ見て処理できる人もいるし、そうでない人もいる。何かを調べる場合に、例えばある内容についてwebで検索をした場合、ある程度まで調べたら、あ、これもうこのページ見ても仕方がないな、って見切りをつけていると思うんですね。最後まで読まなきゃわからないってやっていると、効率悪いですし、あんまり早くに見切りをつけすぎちゃっても見落とすかもしれない。
これは、自分で繰り返しながらそのチューニングをしていかないといけないところだと思います。もし、その区切りのタイミングを教えてくれる機械があればいいけど、無かったらそれは自分で経験するしかない。だから結局体で覚えるしかないかな、と。
結局、自分の経験が一番だと思います。
あとは、グループワークでやると、学生同士の間で刺激になるし、教えることは教わること以上に勉強になるので、お互いに学びあうことはアクティブラーニングでも大事なところだと思います。
―そうですね。先生と学生というのと、学生と学生で。 でもたぶん、学生と学生との方が学ぶと思うけどね笑。
―そうなんですかね笑。たしかに、勉強できる子はめっちゃできますもんね。 うん。学生同士なら、すごい学生っていっても同級生じゃないですか。だからちょっとがんばろうかなって、より刺激は受けやすいかなって思います。教員が相手だったら、お互いにという形にならなくなっちゃう。先生に追いつこうと思わないじゃないですか。
―そうですね笑。さすがに無理ですね。
赤坂先生の「授業百景」vol.2はここまで!
続いては、赤坂先生の経緯について詳しく教えていただきました。
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- 赤坂宗光先生
- 地域生態システム学科