伏見千尋先生
~新しい価値を創り出す楽しさ~
第27回は化学物理工学科の伏見千尋先生にインタビューしました!
今回は、伏見先生の今に至るまでの経緯、研究への想いについて詳しく教えていただきました。
〈プロフィール〉
お名前 伏見千尋先生
所属学科 化学物理工学科
好きな本 エネルギー関係、人材育成関係、経済学関係など、たくさんあります笑
(おすすめの本:D・カーネギーの「人を動かす」と「道は開ける」、トーマス・ヘイガーの「大気を変える錬金術」(ハーバーボッシュ法について)、ウルリケ・ヘルマンの「資本の世界史」など)
ー伏見先生はどんな研究をされていますか?
炭素系の資源を熱化学的に変換して燃料や発電、化学品に有効利用しましょうという研究をしています。炭素系資源には、石炭やバイオマス、廃棄物がありますが、今はいくつかのバイオマスの実験とプロセスの開発を行っています。
様々な条件下におけるバイオマスの反応性を見る実験や装置を作る研究などを行っています。
プロセス開発では、バイオマスを使って発電や燃料を作ったり、化学品を作ったりしたときに、元のバイオマスから物理的・化学的に変換して、最後製品ができるところまでの一連のシステムがあります。それをみて、経済性がどうか、環境性がどうか、エネルギー投入がどうか、CO2排出量がどうかを評価しています。
発電するときと燃料を作るときというのはエネルギーの生産性が求められます。だからバイオマスから取れるエネルギーの方がプロセスに投入するエネルギーよりも多くないと意味がありません。また、お金が高すぎても成り立ちません。
そういった制約がかなりきついんだけども、それらを成り立たせるということをやっています。
また、これらの熱化学変換反応器の一つとして、流動層というものを結構使っています。流動層とは、粒子を詰めた層に下から流体(気体のことが多い)を吹き込んで、粒子を液体のように流動化させる技術です。層内が均一に近くなることと、伝熱速度が比較的大きいので工業的にも使われることが多い技術です。2年前からこの流動層などを用いた火力発電の高付加価値化の研究も始めました。
―続いて、これまでの経歴を教えてください!
学部3年生の時を考えると、将来的にもエネルギーと食料は必要になるだろうと考えていました。だから、エネルギーか食料関係の仕事をしたいなと言うことがありましたね。
研究職になろうと決めたのは、ずっと勉強していたらそうなったと言う感じです。大学の教員になろうと思ったのは、ポスドクになって何年か経ってからですね。ポスドクのときには次どこに行くかという話がでてくるので、そのときに企業の研究所に行くか、国の研究所に行くか、大学のほうに行くかという三択があって、それを考えながら過ごしていましたね。ポスドクの時には、ハワイ大学で1年研究して、その後、日本の財団法人の研究所で研究していたので、一旦大学を離れました。そのときに色々考えていて、大学が自分に合っているかなという感じで考えていたら、助教のポストができたので、そこで助教になったって言う感じですね。
ーハワイ大学にいらっしゃったのですね。
博士課程の時に日本だけにいても視野が狭くなってダメだと思ったので、海外のポスドクをずっと探していて、ハワイ大学がポスドクの募集をしていたため、応募しました。
仕事の面でも生活面でも、日本との違いを知ることは重要なことなので、それを知ることができたので良かったです。逆に、日本を離れて失う日本の良さもいくつか実感することができました。
ー研究の楽しさとはなんでしょうか?
研究の楽しさとは自分の考えと学生の考えを合わせて新しいものを作っていくことです。手と頭、両方動かして、実験やシミュレーションを行って新しい価値を創り出せることです。
研究室のメンバーにはそれぞれのテーマがあるのだけど、チームワークなのでボツ案を潰しながら考えていたことを進めていって、それらが一つにまとまったところで新しい価値ができるというところが楽しいです。
ー研究へのモチベーションは何でしょうか?
今までなかったものを創り出したいということと、低炭素社会、できれば化石燃料が10分の1位になる所を狙っていきたいと思うので、そういうことに研究で貢献したいです。また、それに貢献できる人材を育てたいということは常々思っています。そういう人たちに活躍してもらうことや、学生の人が日々の活動で楽しいことや充実感を得るようなことが大切じゃないかなというふうに思いますね。
ー研究者として大切にされていることはありますか?
膨大な量の勉強とか実験、計算をやり切ることです。学生にも言っているんだけど、マラソン的に研究ができることです。
継続性が非常に重要なので、調子悪い日は休んで構わないのだけど、投げ出さずに、ずっとやることを大事にしています。100m10秒で走る必要は全くなくて、ただマラソンのようにリタイヤせずに歩いてもいいから前に進み続けることが必要だと思いますね。
あとは、いい意味でプロ意識を持つことですね。学生の人にもやっぱり「社会人=プロ」であって、研究室はそのための準備期間だ、という意識は常にもっているように、とは言いますね。
お金をもらうことはプロフェッショナルだから、何かのプロでないといけません。要するに、プロは素人ができない何かがないといけません。あくまで俺はプロであり、何ができるプロなのか、というところは考えていますね。
ー最後に、高校生に向けて伝えたいことはありますか?
自分でしなければいけない課題とかがあると思うので、その都度その都度、それを着実にこなして、身に付けることが重要だと思います。また、高校生だと、どういう大学でどういう分野を選ぶかと言う話が出てくるんでしょうけども、周りの人と相談しながら自分で決断することでしょうね。あの人がこう言っていたから私はこうしました、というのは人生の選択としてあまり良くないかもしれません。なんだかんだ言っても自分の人生なんだから、「自分で決めました」というところがあると良いのかなと思いますね。
伏見先生の「先生大図鑑」はここまで!
最後まで読んでいただきありがとうございます!
伏見先生の授業についても紹介しています。「 第二十七景「化学物理基礎」~スポーツの素振りのように、化学系に進むための基礎をつくる!~ 」も合わせてどうぞ!
文章:あだち
インタビュー:2020年10月30日
※インタビューは感染症に配慮して行っております。