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旧授業百景

「化学物理基礎」

~スポーツの素振りのように、化学系に進むための基礎をつくる!~

2021.03.09

第27回は伏見千尋先生の授業特集です!

今回は、伏見先生の授業づくりについて教えていただきました!
化学物理工学科1年生向けの授業「化学物理基礎」を取り上げます。

〈プロフィール〉
お名前 伏見千尋先生
所属学科 化学物理工学科
好きな本 エネルギー関係、人材育成関係、経済学関係など、たくさんあります笑
(おすすめの本:D・カーネギーの「人を動かす」と「道は開ける」、トーマス・ヘイガーの「大気を変える錬金術」(ハーバーボッシュ法について)、ウルリケ・ヘルマンの「資本の世界史」など)

ー「化学物理基礎」はどのような授業なのでしょうか?

 基本的には、「物質がどういう状態であれば安定するのか」、「どのように安定な方向へと変化するのか」、ということをまず教えています。高校の時に習っている沸点上昇や凝固点降下、浸透圧などを、もう少し理論的に説明します。高校の化学では、ただ式がボーンと出てくるのですが、それをもう少し説明しましょうという授業です。

 例えば、反応というのはマクロでみるとエネルギーが下がる方向に進むので、エネルギーが一番下がった極小値のところに進んでいく、それが自発的な方向です。その逆の非自発的方向に反応させるには仕事を加えなければいけません。イメージとしては坂道にボールをおいたときには、自然には下に転がります。反応も自然にエネルギーが下がる方向に行きます。その逆、非自発過程をやろうとしたときには、ボールを持ち上げるという仕事など、それに相当する仕事を加えないと基本的には反応が進みません。

 自然というのは平衡で一番安定な状態です。だからエネルギーが低い状態からどれだけずれているか、そのずれ方が反応を起こしていますよ、それが駆動力ですよ、ということを教えています。

ーなるほど!学生へのアンケートで「伏見先生は学生に分かりやすい例えをしてくれる」どいう声があったのですが、何か意識されていますか?

わかりやすい例えをするというよりも、例えを使ってわかりやすくすると言ったほうが正しいですかね。強引なときもあるけれど、身近な所に落とし込んで話をした方が、関連付けはできるだろうと思っているので、意図的にたとえ話を入れています。

ー授業はどのようなスタイルで進められていますか?

 化学物理の教科書はいくつかあるのですが、授業ではまず1冊を指定します。1つの教科書にしないと、特に1年生はわけがわからないだろうから、1冊を選んでそれに沿って順番通りに進めています。ただ、学生には「学部の講義で習っているのは物理化学の簡略版であって、教科書によって簡略のされかたが違うので、1つの教科書で十分という事は無い。だから1冊の教科書を中心に置くけれども他の教科書で必要に応じて補ってほしい」ということを話しています。

 僕の板書については、教科書を要約して、ぐっとまとめたものを書いています。教科書の抜き出しをして、説明をして、教科書で説明している文をまとめているようなものですね。僕のイメージでは教科書に1段落で書いてあるものを1-2行でバシッと書く感じです。要はこの段落はこういうことを言っているのだ、というのを書いて、そのノートだけをみれば何とかなるようにしています。

 手書きの感覚は大事にしたほうがいい科目なので、手書きで板書しています。

ー手で書くことが大切な科目なのですね!

 とにかく手を動かさないと頭に入らない科目なので、いかに手を動かすかを意識してやっています。目でなく、手にうったえる科目なので。

 この科目ではスライドだけだとサーっと見て、分かった気になって、後に残っていないことが多いから、ちゃんとノートをとらせるようにしています。

 また、問題演習を行うようにしています。最初にこの授業を担当したときに教科書の演習を全部解いたので、その上で抜粋しています。毎回1週間で4~6問ほど選んでプリントという形にして、次の週の始めに回答を説明しています。その上でその回の授業の内容に入っています。

ー授業はどのように学生の役に立ってほしいですか? この授業に関しては、2年生以降も研究室に入ってからもあっちこっちで使います。例えば野球とかテニスとか剣道の素振りや、格闘技の受け身みたいなものだと私は思っています。素振りや受け身だけやっても何になるんだという話もあるけど、受け身なくして格闘技をやる事はありえないですから。素振りや受け身のように手を動かしながら、自分のものになるように刷り込むしかない、そういう科目です。
ー授業を行う上で意識されていることはありますか?

自分が学生のときに分かりにくかった教え方をしないようにしています。「学生にとって良い講義をしよう」という意識よりは、「学生にとって悪い講義を避けよう」という意識で学部の講義をしています。そのため、自分が大学1,2年生の時に受けた講義を思い出して、「悪かったもの」を反面教師にしています。
ーそのようにして分かりやすい授業を作られているのですね!授業へのモチベーションはどこから来ているのでしょうか?

学生の人のレベルを上げるということのためにやっている、というのはありますね。学生が卒業して、そのあと社会で活躍・活動できるところまでレベルを上げることが我々の仕事です。各学年に応じて必要なことを教える、叩き込む、鍛えることが必要なので、それをするという感じですかね。

伏見先生の「授業百景」はここまで!
伏見先生の今に至るまでの経緯、研究への想いについて詳しく知りたい方は「#27 「伏見千尋先生」〜新しい価値を創り出す楽しさ〜」もあわせてどうぞ!

文章:あだち
インタビュー日:2020年10月30日

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
※インタビューは感染症に配慮して行っております。