教えないといけないことが多すぎるので、授業時間に全てを理解できなくても予習復習を vol.1
「授業百景」第5回は田中治夫先生の特集です!
田中先生の授業について学生からは、以下のような部分が授業の魅力として挙げられていました。
【土壌学】
〇スライドに詳しい説明が含まれていたため、予習復習がやりやすかった。
〇授業後に小テストを行うため、授業中に理解しようという意欲がわいた。
〇スライド数が多かったが、その中でも重要な所を強調して説明してもらえた。
そんな田中先生の授業づくりの肝を聴いてきました!
(コーノ以下―)本日はどうぞよろしくお願い致します。(田中先生以下スペース)そんなに、いい授業をしているとは思ってないんですけどね。どうぞよろしくお願いします。―いえいえ!今まで受けて授業の中で一番良かった!という学生さんがいたので!じっくりお聞きして参ります。
必要な情報量を押し込みますので、予習は必須で
―早速ですが、授業づくりについて伺っていきたいと思います。今回、土壌学の授業が学生から選ばれましたが、全体的にはどのような流れですか。 普通に15回あって、14回きっちり授業をして、15回目は質問ある?って聞いて、まとめをしてからテストっていう形ですね。―1コマずつの流れはどのような感じですか? スライドで一から説明していくんですけど、教科書は『土壌学の基礎』っていう教科書を使っていて、今は新版が出来たので新しいのに変えました。で、土壌学の授業は、基本的には公務員試験に対応できるようにやっているんですね。その公務員試験は範囲が結構広いので、相当幅広いことやらないと対応できないんですよ。だから、教える量が多いんですね。
学生にも最初に言ってますけど、変な話、君たちはたぶん全部は理解できません。だけど必要な情報量だけどうしても与えたいので、無理やり押し込みます。スライドが多いと言われているのですけど、そのために、いきなり授業聴いても多分ついていけないんで、この教科書の該当する箇所を最初に読んでおいてください、って言ってるんです。
―予習なくして、ですね。
まあ、そう言いながら、やっぱり教科書通りじゃなくて教えたいとこはいっぱいあったりするんです。まず、土壌学っていうのは、農工大だと生物生産、旧農学科にあるんだけど、農芸化学にあるところも多いんですよね。うちの研究室も大昔って50年近く前は農芸化学にいたんです。今は環境の方にいたりするところもあるので、つまり教科書の方針が色々違うんですけど、この教科書を書いている先生が酪農学園大の先生で、生物生産・農学に近い場所なんで、授業しやすいんです。
加えて言うと、pHの説明から入ったり基礎的なこともカバーしてあるんです。もちろん、それを全て授業で説明する時間はないのですが、学生にとってもいいかなと。あと、1人の先生が書いているから論旨が一貫してるというのもいいです。なので、これを教科書として、「先に読んでおいてね、授業では、それに関する章をやります」ということでやっています。補足や追加したい情報があればそれは授業で扱います。―教科書で、ベーシックなことをやって、田中先生のここは重要というところは補足してという感じですか? 重要というか、押えておいて欲しい基礎の所だけでは、さっきの公務員試験に出てくる量に全然足りないんですよ!
―そうなんですね笑。 実際、教科書には公務員試験に必要な情報量の1/3ぐらいしかないんですよ。だからあとは、土壌の教科書って結構色々あるんで、10数か所の教科書から、あちこち引っ張ってきて、それを合わせてパワーポイントを作ってるんです。
―10数ですか(゜゜)すごいです。スライドの枚数は何枚ぐらいありますか? 大体、スライドは50枚ぐらいかな、平均すると。だから、1枚に1、2分ぐらいで説明しちゃう。これが多いと言われる。ただ、学会の発表なら1枚1分だからね、それを考えると少ないと思うんですけど、やっぱり情報量が多いって。
あと、30時間授業をしたら、予習復習で60時間やりなさいっていうのがあるんですよ。知ってました?
―そうなんですか(゜゜)! もう、ずっと昔から言われていることで、それを今年からシラバスに書きなさいって言われてる。
―それは農工大の中でですか? いや、それは文部省です。昔から決まりで、明文化もされてたはずなんだけど、一般的に公表されていないっていうか、別に隠してたわけじゃないけど。
で、ちゃんとそれをシラバスに書きなさいって今年から言われて、今年はみんな書いてあります。時間数をそのままには書いてないけど、それに対応するものは書いてあるはずです。ということで、まあ予習がこの教科書になります。
私は宿題っていうのを出して、これは提出しなくてもいい宿題なんですけど、これを自分でちょっと勉強してくださいっていうことで、出してます。記述式が多いので、これを採点してるとほとんど時間取られちゃうくらい大変なので、「採点しないよ」とは言ってあります。まあ自分で勉強しとけって感じです。一応、予習復習は合わせて30時間は行くかな。ちゃんと守れば結構時間かかるんで。
実験の遅刻は厳禁
―授業1コマの流れはどのような感じですか? 授業前に、まず出席カードを配っています。僕は遅刻に凄くうるさいんです。チャイムが鳴る前から教室にいる学生に配り始めて、授業が始まる前にはすべて配り終えます。一対一で顔を見ながら。で、チャイムが鳴った時点で配るのは止めて、その後は、一切「遅刻してはいけない」とか口では言わないんですけど、時間が過ぎると出席カードに大きく「チ」って書いてあるカードを渡すので、遅刻した人のカードはすぐ分かるんです。で、学生も自分が遅刻したんだなってすぐ認識できます。それでも遅刻する学生はいるんですけど、そこまで講義の場合はうるさくないです。
実験の授業の場合、遅刻には凄いうるさくて、受けさせないときもあります。実験は、最初に危険な部分の説明をするので、聞いてもらわないと困るので、カギ閉めちゃいます。遅刻したら、教室に入れないようにします。特に化学って結構劇物とかも使うので、危ないじゃないですか。昔、やっぱり遅れてくる学生がいて、大体そういう人が失敗するし、危ないと思ったので、そうしています。
―なるほど。
田中治夫先生の「授業百景」vol.1はここまで!
続いてのvol.2では、板書かスライドか…悩んだ末にスライドを選んだ経緯について詳しく教えていただきました。vol.2はこちら!
※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
- 田中治夫先生
- 生物生産学科