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旧授業百景

授業では発声に意識を、テンポとリズムは落語から?

2020.03.10

記念すべき第1回は高橋美貴先生の特集です!

高橋先生の授業について学生からは、以下のような部分が授業の魅力として挙げられていました。

【歴史学】
授業後に意見カードを書く時間があり、その中で視点が優れているものを次の授業の始めに紹介するシステムが良かった。そこで紹介されるために頑張ろうと思った。
〇授業と資料から論理的に流れや史実を推論する過程を学べたところ。毎回問題提起があるので飽きない→次回答え合わせがあるので楽しみ。
〇先生の講義もストーリー性が高く面白かった。科目に対する先生の情熱が凄く、引きこまれた。

そんな高橋先生の授業づくりについて、伺ってきました!


(コーノ以下ー)初めての試みなのですが、本日はどうぞよろしくお願い致します。(高橋先生以下スペース)どうぞよろしくお願い致します。

高橋美貴(たかはし・よしたか)先生
地域生態システム学科

コメントカードの紹介がクイズ番組っぽい

―早速ですが、授業はどのような流れでされていますか。 歴史学の授業ですと、90分のうち15分ほど前回の振り返りをしてから講義に入って、その後に20分間のコメントカード記入の時間を設けています。
 90分間しゃべり続けるというのはこちらも大変ですし、授業を受ける学生さんも大変でしょう。こちらに、よほどの話術や自信が無いと、学生さんを90分間集中させるというのは、至難の業だと感じています。まして、それを15回連続で、というのは、少なくとも私には不可能に近い。ひどいときには、聴講している学生の2/3以上が伏せてしまったことがあって、その場から逃げ出したくなったこともあります。
―体育の後に(オムニバスの)高橋先生の授業を受けたことがあるのですが、聴きたいのに聴けない!と思いながら睡魔に負けたことがあります。すみませんでした。 学生も、バイトや通学で大変ですよね笑。でも、授業は学生と教員の合作という側面があるので、どちらの熱意が少なくても、うまく行かないものなのだなと感じています。
―授業の中で自分のコメントが先生に読んでもらえると、学生は認めてもらえた・届いたようで嬉しくなる、やる気につながる素敵なシステムです!

「先生の発声方法はなってないです」―学生からの衝撃のひとこと

―授業をするときに心掛けていることはありますか。  もっとも注意しているのは発声ですね、声の調子やトーンです。
 農工大に赴任したばかりの頃、授業後に一人の学生さんが近づいてきて、突然こう言われたんです。「先生の発声方法はなってないです。声が頭のてっぺんから出ています。それではダメです。ぜひ鴻上尚史さん(劇作家・演出家)の本を読んでみてください。」
 面と向かって、発声法がダメだと言われたので非常に驚きました。ただ、授業に強い苦手意識を抱えていた(いまだに抱えている)ので、ありがたい指摘だなと素直に受け取り、さっそく本を手に入れ読みました。内容はまさに目からうろこで、声を出すという行為に、これほどのテクニックや練習、場合によってはトレーニングが必要であることを初めて知りました。一流の役者さんは、実はこのような声の出し方や、声が音になって出る身体の場所を自由に変えることができ、喜怒哀楽を声だけで表現する能力を持っているのだ、ということを初めて知りました。
 もちろん、素人がそんなレベルに達することができるわけはなく、関係書籍を集めて読み漁るのも途中でやめましたが、それでも得たものは大きかったと感じています。
―発声に注意しているというのはとても意外です。

「発声と身体のレッスン」…学生に勧められた本

鴻上尚史著・白水社

引き込む話術にはテンポとリズムを

 コーノさんは去年受けた授業をもう一度受けたいと思いますか?
―内容が分かっているとしたら…微妙ですね笑。 そうですよね。ただ、とくに落語・講談を聞いていると、「なぜ彼らは同じ話をしているのに、何度聞いても面白く聴くことができるのだろうか?」と強く感じます。話す「テンポ」や「リズム」が肝なのかな、と何となく感じています。
 授業前に好きな落語家の話を聞いて、話すスピードやテンポを意識したり、実際に授業ノートを声を出して読みながら授業の予行練習をしたりして、わずかなりともテンポがよくなるように、論点の並べ方などに直しを入れるようにはしています。
―高橋先生の入念な準備と落語や講談のテンポやリズムが、ストーリー性が高く引き込まれる授業を生み出しているんですね。

高橋先生お気に入りの落語
「佐々木政談」「唐茄子屋政談」「抜け雀」「火焔太鼓」「甲府い」「刀屋」「火事息子」

学生‐教員関係を基本にした授業に、学生‐学生間関係を織り込む

 最近、授業のなかに、学生さんから提出してもらったレポートの紹介を織り込んでいこうかなと考えています。他の学生がどのようなレポートを書いているのか、はそれなりに気にはなるのでは、と感じたためです。
 学生‐教員関係を基本にした授業に、学生‐学生関係を織り込むと、教員から学生へという一方的な授業の形をわずかなりとも変えるきっかけも生まれるかも、などと考えたわけです。また、大学院の授業では、履修者の人数が少ないこともありますので、輪読形式を取り入れるなどして、一方的な教授型授業をやらないようにしています。
―確かに、学生にとって同じ授業をとっている他の学生がどんなことを考えているかということは刺激になると思います。

授業で使っていた資料の一例
(2019年度から、作成ソフト変更のため現行授業のプリントとは異なる)

緊張しいな先生二人のコラボ授業

―他の先生の授業を見たことはありますか。  オムニバス型の授業であれば、あります。あと、5、6年前くらいに同じ地シスの吉田智弘先生とコラボレーション型の授業をしたことがあります。私も彼も授業で緊張するタイプなのですが、彼が、生態学者の書いた文明史の本を題材にした授業をやるというので、そのコメンテーターとして私を招いてくれたんです。授業の緊張を和らげることにもなるから、ぜひと。
 まず吉田先生が、授業内容の本筋を講義し、彼が息切れしてきたころに「高橋先生にコメントをもらいます」と言って私が登場する。そして、私のコメントが終わると、また吉田先生が登場して続きを講義する、というのを繰り返しました。幸い、吉田先生の取り上げた本は私もすでに読んでおり、ものすごい衝撃を受けていたので、それが事前の情報共有になり、比較的うまく噛み合ったのでないかと思っています。このような教員のコラボレーションには、教員同士の事前の情報共有が不可欠ですので、突然実施するのは簡単ではないと感じていますが、このときは私自身も楽しめました。
―学生にとっても刺激的ですね!


…高橋先生の授業はどのように作られていったのでしょうか?
続いては高橋先生の経緯に迫ります!
 高橋先生の「先生大図鑑」はこちら

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。