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旧授業百景

歯ごたえのある授業でじっくり考える力を🤔 vol.1

2020.05.14

「授業百景」第12回は内藤方夫先生の特集です!

内藤先生の授業について、学生からは以下のような部分が授業の魅力として挙げられていました。

【熱統計力学・熱統計力学演習】
〇生徒にしっかり考えさせる授業や課題を出す。
〇計算過程や公式よりも、計算結果や式の持つ物理的意味をしっかり教える。
〇講義では初めにレジュメを配り、解説を交えて先生が読み進める。演習では事前に解いてきてもらった課題を生徒に板書・発表をさせて、生徒同士で質疑応答、先生が補足説明したりする。
〇「能動的な頭の使い方ができるような学習の仕方をするように」

そんな内藤先生の授業づくりの肝を聴いてきました!


(コーノ以下―)―本日はどうぞよろしくお願い致します。(内藤先生以下スペース)よろしくお願い致します。

内藤方夫(ないとう・みちお)先生
工学部物理システム工学科をご退職され、現在シニアプロフェッサーとして授業を受け持っている。

物足りないとは言わせない☆

 最初に言っておくけど、僕の授業が良いって選んだ人は相当意識が高いというか、そういう人が選んだって言うのはあるんじゃないかな…。なかなか難しいからあまりいい授業だって言う人少ないと思うんだけど。高度な難しい授業をしているから、上の方の学生は積極的に質問してくれるし、評価はしてくれるのかもしれないですけど。
―そうなんですか。高度な授業を、というのは意識してされているということですか? 授業のレベルは高めに設定しています。それはここに赴任してきた時からずっとです。なぜ授業のレベルを高めにするかというと、こういう言い方がいいかはちょっと分からないですけども、東大東工大レベル、またはそれより上を目指すって、一応考えていて。その理由の一つに、農工大にも非常に勉強ができる子がいることもあって、彼らにとって物足りないとは思われない程度のレベルにしよう、とはしています。

 ただし、最初は板書でやってた。で、板書も若いと書ける量もかなり多く書けるんだけど、学生も全部書き取らなきゃいけなくて、それがいいかどうか迷った時期があって、最近はプリントです。
 板書の時は大まかな流れを頭に入れていただけから、結構あっち行ったりこっち行ったりしちゃって学生には分かりづらくなるかなあ、ていうのがあった。プリントだと文章にするときに、一回校正みたいなのが頭の中で入るじゃないですか。それで段々プリントになりました。その方が流れもいいし、論理的に組み上げられる。指定の教科書から重要な部分を抜き出してきて文章にするとか、一つのストーリーになるような形でプリントは作ってます。

 極力1時間半の間に大雑把な流れというか概要がつかめるようにしようとしていて、板書を入れるときもあります。教科書やプリントで、重要な数式が連なっていて、1行目と2行目がどう繋がってるのかが分からない場合があると思うんですけど、そういう部分は板書で追うようにします。

暗記はほどほどに、じわじわ力をつけたい

 けれども、授業の内容は高度なわけだから、何とか分かってもらえやすいように具体的な例とかも時々入れるようにしてます。で、農工大のP科(物理システム工学科)*の学生に関して言うと、学部1年生2年生の間に高校の授業の延長、もしくは大学入試の延長の勉強の仕方で来て、そのまま行っちゃう学生はつまずくんです。大学入試の勉強の仕方って、典型問題を数多くやって、典型問題を覚えて対処する。それをやるとね、3年生ぐらいから成績悪くなってくる。
―…そうなんですか。 農学部はそうじゃないですか?笑。
―む、難しいですね笑。私はやや人文系にいたので、でも大学入試の時は物理選択で、まさにそんな感じでした。詳しく聞きたいです、3年生で対応できなくなるんですか? ちょうど2年後期から3年前期で、典型を覚えて対処するっていう学生が落ち始めて、大学の勉強の仕方を身につけた人があがってくるんですよ、すると交差する。だから、入学時の成績と卒業時の成績ってあんまり相関ないんじゃないかと、僕は思ってるんだけど笑。
―そうなんですね。ちなみに、大学での勉強の仕方って具体的にはどんな感じですか? 暗記するようなことは一切やらない。例えば、力学だったらニュートンの三法則が頭に入ってれば、後は数学の微分積分で対処できるんですよね。だから、その基本的な原理原則をみっちり丁寧に教えて、覚えることが少なくなるように極力減らす。試験問題もやっぱり、よく出るような問題にならないように典型的な問題は外しますね。
 だから、成績悪い人には僕の授業はウケてないというか、評価は高くないと思う。で、実際に単位を落としてる学生もかなり多いです、他の先生に比べると。
―内藤先生的には、授業の単位を落とさない学生って何ができてる学生ですかね。 意欲! だから、少なくとも僕の授業に関して言うと、僕の授業を信頼してついてきてくれる学生は段々伸びてきます。だから、一つの授業でバンと成績や能力が上がるというよりも、2年次3年次の授業何科目かにわたって、少しずつ少しずつ積み上げて、それが結構最後は大きな差になってしまうという。
―わわわ。

手ごわい名著と格闘

 今、何科目か担当していて、教科書を設定している授業もあるし、してない場合は参考書を挙げてますけども、教科書・参考書ともに質・レベルの高いものを選びます。僕自身、勉強したのが今から40年前で、そのころの教科書に比べると最近は手軽に読める教科書が多い。そういうものを参考書・教科書には挙げないです。じっくり読まないと分からないっていうくらいのものを設定してます。
―かなり、歯ごたえのありそうなというか… そうそう。やさしい本というか、サッと漫画みたいに読める教科書を読んでも記憶には残らない。自分で苦労して、読んだものの方が頭には残る。
―なんというか、もがいた方が覚えるという感じですか? うん。特に物理は、昔の教科書の方が数段難しくて笑。
―ひい…笑。そうなんですね。ちらっとシラバス見たんですけど、参考書にみすず書房の本が出ていてびっくりしたんです。 朝永振一郎先生の『量子力学』ね。あれは初めに教科書として1,2年設定したんだけど、やっぱりとても読むのが大変で、参考書にしました。一度量子力学を学んだ人だったら読めるけども、最初に読むとなんか結構大変。
―確かに、初学者だときつそうです…。 朝永先生の本は名著ですよ。
―名著ですか。ちょっと、読んでみたい…読めるかな…。では、教科書・参考書も難しめ、レベル高め、と。 うん。本質的なところをじっくり教えて、覚えることは極力減らす。


内藤先生の「授業百景」vol.1はここまで!
続いては、定期試験やプリント作りなどについて詳しく教えていただきました。
vol.2はこちら

* 物理システム工学科(P科)は、工学部改組により2019年度から化学物理工学科と生体医用システム工学科へと移行した。

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。