「資源リサイクル学」
〜それって本当に「環境に優しい」の?多様な視点からの「環境」を考える〜
第24回は、環境資源科学科の小瀬先生の授業特集です!
先生が担当する授業の中でも「資源リサイクル学」についてインタビューさせていただきました!
今回は、その中での授業の工夫や授業に込めた思いをお聞きしたいと思います!
〈プロフィール〉
お名前;小瀬 亮太(こせ りょうた)先生
所属学科;環境資源科学科
研究室;再生資源科学研究室
最近の趣味;奥さんと高尾山に登ること
【授業概要】
資源リサイクル学は、循環型社会をマテリアルの視点から紐解いていく授業です。
その講義は、学生に「健全な環境とは何か?」という明快ながらも答えのない問いかけから始まり、学生との対話から循環型社会への多様な視点を育成していくものです。
マテリアルといっても講義は理系的な科学技術に留まらず、それを構成するルールである法律、複雑なトレードオフの関係を含む人々など、まさに循環型社会とマテリアルの関係を描き出した講義は、受講生からも人気の高いものとなっています。
環境資源学科でまさに環境と資源を学べる授業!
…さっそくですが、この授業の目的、位置付けについて詳しくお聞きしてもいいですか?
(小瀬先生)はい。この授業はまさに環境資源学科の導入ですね。
新入生は環境問題を解決するための方法を学べると思ってうちの学科に来るんだよね。だけど、現実の問題はずっと複雑で、これはよりベターだよという方法しかないんです。
だから授業を通して、理想と現実のギャップに学生がフラストレーションを感じないように、そのギャップの架け橋になるような授業としたいと思ってます。
…その中で特に意識していることはありますか?
そうですね…まず、大学で勉強するときには、その人が持っている好奇心や課題という種の強さが大事なんです。
それさえあれば、大学は学ぶ環境が整っているので、その人自身の能力を活かせるかどうかは種の強さに依存する。だからその種を大きくしたい、見つけてもらいたいという意識で授業を行っています。
「健全な環境」って一体なんだろう?
…授業の内容について詳しく教えていただいてもいいですか?
講義では、まず「健全な環境ってどんな環境だと思いますか?」というのを最初に投げかけるんです。そうすると「資源が循環している」とか、「自然が維持されている」 とか様々の答えが出るんですが、ただ、やっぱりこれは一つの答えがでないんですね。
なぜ答えが一つにならないのかをより理解するために、次に「環境問題の解決は誰のためのものですか、人間のためか、生き物のためですか?」と聞くんです。
そうすると見事に半分ずつに割れてしまうんですね、この時点で 一人一人が健全な環境を細部まで思い描くと、それは人類共通の認識とはなり得ないということが如実に出るんです。
この導入で、環境問題を解決するための循環型社会の形成に関わる問題の性質自体が、いろんな答えのあるものなんだと理解してもらうんです。
中心的な問い(人と自然が共生するとはどのような形か)は変わらないけど、それを問い続ける中で様々な矛盾点が存在していて、それを見つめることが一人一人の種を深めることにつながると思っています。
…矛盾点というと、例えばどのようなものでしょうか?
そうですね…今化石資源を使わないという話が出てきていますが、それを再生可能エネルギーの代表の太陽光に置き換えるとしましょう。
そうすると、例えば、アメリカで消費されているエネルギーを全て太陽光に変えたら、そのための太陽光パネルはスペイン一国分もの面積になってしまうという話があります笑
そしたら、そのスペイン一国分の敷地には植物が生えませんよね。だから、見方を変えると化石資源を使うってことは、地球表面上の生き物たちを生かしてるっていう様にも見える。そこまで考えると本質は、絶対的なエネルギー量そのものが減らないと、代替エネルギーに変わったとしても、利用の仕方次第では何かリスクをもたらすよねってことを問いかけているんです。
これは答えではないんですけど、こうやって考えてもらうきっかけを授業に組み入れていくようにしています。
…確かにスペイン一国分と言われるとイメージ変わりますね…笑そこまで考えてやっと「環境を見ること」につながるんですね。
そうですね、高校と大学の授業は「答えのなさ」が違うので、もちろん専門的な知識を積み上げることも重要なんですけど、問題そのものを考えて、課題を設定するという力も必要になってきて、どちらかというと実社会はそういう問題に溢れているんですよね。
この授業を通して、今までとは勉強するステージが変わったんだということも伝えられたらと思ってますね。
紙の断面をしっかりとみたことありますか?
…授業後半では、実際にリサイクル物質を一つずつ取り上げているとのことでしたが、具体的にはどのようなことなのでしょうか?
例えば、まさに授業では紙をその場で破いてもらうんですけど、、、
(紙を破く)「ビリビリビリ…」
この先端をよーく見ると、ちっちゃい繊維がいっぱいありますよね?
この繊維がまさに紙を構成しているものなんですけど、リサイクルの過程ではこの繊維を一本一本水の中でバラバラにするんです。ということはバラバラにしやすいほど紙はリサイクルされやすいんですね。
だから視点を変えると、紙は水に弱いって言いますけど、水に弱いってことは水にもう一度分散できるということで、だからこそリサイクル可能なんですね。
なので、紙が水に弱いということは、使う上のデメリットだけれども、リサイクル上のメリットになるんです。
そうすると、人間が使うときのメリットだけではなくて、それを廃棄したりリサイクルする時のメリットまで考慮して、物質循環が見えてくるんです。
それに加えて、授業ではリアリティを感じてもらうことがすごく大事だと思っているので、ちぎった紙をじっと見てもらって、「これは木から来たんだよ、木の中にあった繊維なんだよ」ということをくどいように言います。「ってことは木の中では中空の繊維状の細胞だったんだよ。みなさんみえますか?この繊維一本一本の中には穴が空いてるってことですよ。」って。
絶対見えないんですけどね笑笑
こうして、机上で学んでいることとリアリティをできるだけ結びつけて、学んでいることが実際の自然の中のものだというリアリティを持ってもらう。そのリアリティが強ければ強いほど、学ぶことに対する好奇心が強くなるはずなので。
…ありがとうございます。最後に学生へのメッセージをお願いします…!
授業を通して、資源をどうやって使っていくことが、人間と環境が調和した状態なのかということを、本質的に考える問題意識を強く持ってほしいですね。
…ありがとうございました。改めて、本当の意味で「環境との調和」について考えさせられました…!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
授業百景第二十四景はいかがでしたでしょうか?
この後には、先生の研究者人生や更なる紙の可能性についてお聞きしました!ぜひ先生大図鑑をご覧ください。
文章;こぶじめ
インタビュー日程;2020年11月12日(木)
※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
※ インタビューは感染症に配慮して行っております
- 小瀬亮太先生
- 環境資源科学科
- 資源リサイクル学