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旧授業百景

「植物病理学」

~科学って難しい?暑苦しく本当の面白さを伝えます!~

2021.06.09

第33回は小松健先生です!

今回は、小松先生の授業づくりについて教えていただきました!
応用生物科学科3年生向けの授業「植物病理学」を取り上げます。

〈プロフィール〉
お名前 小松健先生
所属学科 応用生物科学科
趣味 将棋をみること

学生に広い世界を見てほしい!

ー小松先生が授業で大切にされていることは何ですか?

せっかく講義を聞いてもらうのだから、講義に関係したことでも何でもいいから、何かしら広い世界を見てほしいと思っています。

僕が担当している「植物病理学」は応用生物科学科の授業なので、食品のことを研究したくて来る学生が多いのです。そもそも、植物の病気を勉強したくて大学に来る人は基本的にいないんですよ(笑) 

だから、僕は授業を受けている学生の6、7割の人は「植物病理学」という学問に興味がないと思って話をしています。そこで、ある特定の分野にしか興味がない学生や、植物病理学を知らないで大学に入ってきた学生に、「どれだけ面白いことがあるか」ということを伝えたい、と思って授業をしています。

大学に入るときから、「野生動物の保護をやる」とか、「将来は食品会社に入るんだ」とか、専攻を決めることも良いのだけど、「こんな分野があるとは知らなかったけど面白いな」とか、「自分はこういう道に行くつもりだったけど、こんなものもあるんだ」とか、途中で面白いと思うことに出会ってしまうことがあると思うのです。

授業のなかで、少しでもそういう引っ掛かりを作れたら、それは学生の人生に大きく影響を与えると思います。

その惹きつけるものとしては、植物病理学はかなり良いトピックスだと思っています。それで最終的に何かしら農業の役に立つことをしたいと思ってくれてもいいし、そうでなくてもこの授業の内容がある程度わかっていると、すごく役に立つはずなんですよ。食品の開発も農作物なしで成り立たないわけですし。

だから植物や昆虫に興味がある人だけではなくて、全ての学生の役に立つものだと思って僕は授業をやっているし、そこには自信があります。

そのための工夫

そうはいっても、「私は食品にしか興味がない」という人もいると思うし、「化学には興味はあるけど生物はそこまででもない」という学生もいるはずで、そういった学生の興味を引くって難しいじゃないですか。だからそこは少し工夫をしています。

まず一個目は、歴史をなるべく入れたいと思っています。歴史って単に覚えるだけじゃなくてすごく役に立つものだと思います。例えば、コペルニクスはこう言った、ガリレオ・ガリレイはこう言った、というのは「今まで考えられていたことがいかに狭かったか」、ということを表しているわけですよね。そこから、どのように新しい発見がされてきたか、その価値が見えてくる。だから科学の歴史って、すごく今の私達の役に立つことだと思っているのです。なので、そのへんの歴史の話はなるべく混ぜ込むようにしています。

もう一個は、他の分野とのリンクをつけています。大学の講義を聞いていても、「あの講義で聞いたあれじゃん!」、とか、「どこかで聞いたことある」、とかそういう風に思う時が、理解できたと思う瞬間だと思うのです。だから、「あの講義であんなこと言っていると思いますけど」とか、「あの先生はこういう研究が得意です・しています」、みたいなリンクを講義の中に散りばめています。そのために、僕は周りの先生方がどんな内容のことを授業で教えておられるかを学生に聞いたりして気にしています。

ここは農学部で、教わるべきことは沢山あるんだけど、それぞれの授業には他の授業とのリンクがあるはずです。だから、「あの先生がこんなこと教えているということは、自分の授業ではこれを教えた方がいいな」とか、そういう連携ってすごい大事なことだと思うのです。だからそこの連携をつけることで、他の授業とこの植物病理学の授業を一緒にとったときに、全体を含めて「農学」なんだなというのをわかってもらえるようにしたいなって思っているんですよ…!

―そうなのですね…!

暑苦しくてすみません(笑)授業のまんまなんですけどね。

暑苦しい講義だと思います笑

―暑苦しい授業なのですね(笑)

なかなか暑苦しい授業だと思います(笑)

ちょうどステイホーム期間中に、歌番組にサンボマスターというアーティストが出ていたのだけど、あの人達って超暑苦しいじゃん。「愛と平和」って叫ぶわけですよ。愛と平和って叫ぶのだけど、ステイホーム期間中な上に福島の海岸で撮影しているもんだから、そこにはスタッフしかいないはずなんですよ。スタッフしかいないのだけど、いつもどおりあの暑苦しい感じでやっていて、でも届くんですよね。

今回(2020年度後期の授業)は、学生はみんな家にいながら、僕は画面に向かって授業をしているわけなのですが、「きっと届くものだ」と思いながら、自分はラジオのパーソナリティだと思って、気持ちを込めて授業をしています。

画面に顔も出して、喜怒哀楽を表に出して授業しているのだけど、「この状況ですごく繋がれている気がする」という学生からのコメントがあって、そこはやって良かったと思いますね。

一方で、「ただ面白い話を喋っている」というのでもなくて、体系的に授業をやって、その上で最近の研究のこととか、現場のこととかの小ネタとかを入れるようにしています。

授業って古典落語みたいなものだと思っているのですよ。古典落語は、フォーマットはあって、そのうえで新しいネタを入れているから、何回見ても面白いものだと思うのです。授業も、教科書というフォーマットはあるから、基本的にはその内容を教えなくてはいけません。だけど、その時々において、教科書には書いていない、新しく分かったことなどのネタがあります。そういうネタを、体系的なファーマットを踏まえたうえで入れていくことで、「こんな世界があるんだ!」と思ってもらえる授業を目指しています。

授業の様子。授業の最後には先生おすすめの本を紹介するコーナーも!

植物病理学の授業とは

―ちなみに「植物病理学」とはどのような授業なのですか?

植物が起こす病気に関する授業です。
「病理」だから、「病」気の「理(ことわり)」って読むけど、どういう風に植物に病気が起こるのかを、解明する学問っていうことです。その「病気が起こる理由のメカニズム」に行き着くまでに、どういう植物があるか、どういう微生物がいるか、というところから始まって、微生物がどういう風に植物に入っていくかとか、逆に植物側はどういう反撃手段を用意しているのかとか、そういったお話をします。最終的にはお互いにどういう進化を経て、病気になったり、なられたりがあるのか、というところまでいく、という授業になっています。

植物側からも微生物側からも両方から見ないといけないので、15回の授業でそこを全部ぎしっと詰めているかんじです。

面白さを見つけた上で伝える

―伝える上で意識されていることはありますか?

あまり嘘をつかないこと、自分が面白いって思ったことしか面白いって言わないことかな。

授業だと、どうやったって面白くないところがあると思うのです。どうしても教えなくてはいけないことはありますし、面白いことだけを話すわけにはいかないですし。だけど、学生に面白くないと思われるとすれば、それは教える側の原因だと思うのですよね。教える側がその内容を深堀りして、本当の面白さを引っ張り出してきて、学生に「はい、見てください。ここ面白いでしょ!」「ここ、他の授業の内容と繋がっているでしょ」などと、そういう教え方をするべきだと思うんですよね。じゃないと科学って難しすぎると思うのです。薄っぺらく、表面だけ削って面白いところだけを提示するのだったら授業じゃないですし。そのためにはやっぱり教える側がすごく深く勉強しなくちゃいけないと思います。

そういう風に自分で学んで分かったこと、自分が「面白いんだ!」って思ったことを、嘘つかずにしゃべりたい。その方が伝わると思っています。


小松先生の「授業百景」はここまで!
小松先生の今に至るまでの経緯、研究への想いについてお聞きしたインタビュー動画も近日中に公開予定です。お楽しみに!

文章:あだち
インタビュー日:2020年12月21日

※ 授業の形式等はインタビュー当時やアンケートの回答時と変わっている場合があります。何卒ご了承ください。
※インタビューは感染症に配慮して行っております。